アルミダイカスト(ダイキャスト)材とは?
アルミダイカスト(ダイキャスト)とは、aluminum alloy die castingsの略でアルミニウム合金をダイカスト(ダイキャスト)鋳造法によって作られた鋳物のことを指します。ダイカスト(ダイキャスト)鋳造法とは、溶融金属に圧力をかけて金型(ダイス)に注入凝固させて製造する方法です。
アルミニウム合金の場合、流動性が良好なこと、熱間脆性が少ないこと、金型に溶着しにくいことなどが求められます。
ダイカスト(ダイキャスト)のメリット(利点)
ダイカスト(ダイキャスト)には下記の利点があります。
①高い寸法精度の鋳物が短時間で製造できる
②鋳肌(表面)が美しく、ほとんど機械仕上げを必要としない
③金属結晶が微細化するため、機械的強さが大きくなる
④大量生産が可能なため、コストがかからない
アルミダイカスト(ダイキャスト)は他の金属合金に比べて、軽量で耐久性やリサイクル性、省エネ・省資源特性に優れているため、産業用部品だけでなく、家電品やOA機器など私達のごく身近なところに数多く存在しています。
アルミダイカスト材(ADC材)の種類
アルミニウム合金は、大きく分けてAl-Si系合金と、Al-Mg系合金の2種類があります。またAl-Si系合金は、Al-Si系、Al-Si-Mg系、Al-Si-Cu系に分類されます。日本で現在使用されている合金の多くはAl-Si-Cu系のADC12合金です。
◎各アルミダイカスト材(ADC材)の特長について
主なアルミダイカスト材の特長と使用部品例を示します。
①ADC1(Al-Si系)
ADC1は耐食性が良く、金型内での溶湯の流動性が高く鋳造加工しやすい(鋳造性が良い)ものの、耐力はやや低く、自動車のメインフレーム、フロントパネル、屋根瓦に用いられます。
②ADC2(Al-Si系)
耐食性がADC6に次いでよく、鋳造性もよく、靱性が大きいのが特長です。
③ADC3(Al-Si-Mg系)
ADC3は衝撃強さと耐食性が良いものの、鋳造性に劣ります。自動車のホイールキャップ、二輪車のクランクケース、自転車のホイール、船外機のプロペラに用いられます。
④ADC5(Al-Mg系)
ADC5は耐食性に非常に優れ、高い伸びと衝撃強さを示すものの、鋳造性に劣ります。農機具のアーム、船外機のプロペラ、釣り具のレバー・スプール(糸巻き)に用いられます。
⑤ADC6(Al-Mg-Mn系)
ADC6は耐食性はADC5に次いでよく、鋳造性はADC5より優れているものの、Al-Si系に比べると劣ります。二輪車のハンドレバー、ウインカーホルダー、ウォーターポンプ、船外機のプロペラケースに用いられます。
⑥ADC10(Al-Si-Cu系)
ADC10は機械的性質と鋳造性、被削性に優れています。多くのアルミニウム製品で使用されており、特に自動車部品や電気機器部品に用いられています。
⑦ADC10Z(Al-Si-Cu系)
ADC10ZはADC10の機械的性質と鋳造性、被削性に加えて耐鋳造割れならびに耐食性に優れています。
⑧ADC11(Al-Si-Cu系)
ADC11はADC10と同様、機械的性質と鋳造性、被削性に優れていますが、かしめ性がADC10より劣ります。
⑨ADC12(Al-Si-Cu系)
ADC12はADC10と同様、機械的性質と鋳造性、被削性に優れています。多くのアルミニウム製品で使用されており、特にシリンダブロック、トランスミッションケース、シリンダヘッドカバーに用いられています。
⑩ADC12Z(Al-Si-Cu系)
ADC12ZはADC12の機械的性質と鋳造性、被削性に加えて耐鋳造割れならびに耐食性に優れています
⑪ADC14(Al-Si-Cu-Mg系)
ADC14は耐摩耗性と湯流れ性良いため耐力に優れているものの、伸び、衝撃強さに劣ります。自動車のエアコン、シリンダブロック、ハウジングクラッチ、シフトフォークに用いられます。
◎JIS規格アルミダイカストの化学成分
種類 (合金番号) | 化学成分表(%) | |||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Si | Fe | Cu | Mn | Mg | Zn | Ni | Ti | Pb | Sn | Cr | Al | |
ADC1 | 11.0~13.0 | 1.3 | 1.0 | 0.3 | 0.3 | 0.5 | 0.5 | - | - | 0.1 | - | 残部 |
ADC3 | 9.0~10.0 | 1.3 | 0.6 | 0.3 | 0.4~0.6 | 0.5 | 0.5 | - | - | 0.1 | - | 〃 |
ADC5 | 0.3 | 1.8 | 0.2 | 0.3 | 4.0~8.5 | 0.1 | 0.1 | - | - | 0.1 | - | 〃 |
ADC6 | 1.0 | 0.8 | 0.1 | 0.4~0.6 | 2.5~4.0 | 0.4 | 0.1 | - | - | 0.1 | - | 〃 |
ADC10 | 7.5~9.5 | 1.3 | 2.0~4.0 | 0.5 | 0.3 | 1.0 | 0.5 | - | - | 0.2 | - | 〃 |
ADC10Z | 7.5~9.5 | 1.3 | 2.0~4.0 | 0.5 | 0.3 | 3.0 | 0.5 | - | - | 0.2 | - | 〃 |
ADC11 | ||||||||||||
ADC12 | 9.6~12.0 | 1.3 | 1.5~3.5 | 0.5 | 0.3 | 1.0 | 0.5 | - | - | 0.2 | - | 〃 |
ADC12Z | 9.6~12.0 | 1.3 | 1.5~3.5 | 0.5 | 0.3 | 3.0 | 0.5 | - | - | 0.2 | - | 〃 |
ADC14 | 16.0~18.0 | 1.3 | 4.0~5.0 | 0.5 | 0.45~0.65 | 1.5 | 0.3 | - | - | 0.2 | - | 〃 |